月別アーカイブ: 3月, 2021

納棺師が着替えや化粧をしてくれる、納棺の日だった。14:00に斎場に着くと、さっそく手際よく進めていく。

妹達が昨晩選んだ服は、よそ行きのものではなく、母が好んでいた、普段着のようなものだったのだが、偶然にも、母自身が遺影に選んだ写真と同じ服だったようだ。華美な装飾もなく、普段通り。

病院で着せられた浴衣からようやく着替えてこざっぱりして、髪型も整え、本人も気分転換になっただろう。

夕方には、まりごろうとはる坊とえみごろうも連れて、再び斎場に。今晩は皆でお泊まり。ぽっちり兄妹は、広い畳の部屋が楽しいようだ。

ぽっちり兄妹は棺の窓から何度かばあばの顔を覗き、不思議そうにしていた。

夕方には、友人が数名かけつけてくれて、母と対面していた。皆それぞれの思い出があるのだろう。顔を見ては、労いの言葉をかけてくれていた。

その夜はごく限られた友人や親族でのこぢんまりとした夕食会。22:00過ぎまで、母の話に花を咲かせていた。

31日が友引で告別式はできないんだと。無宗教なのでお坊さんもお経も戒名も無く、通夜と告別式の代わりに「偲ぶ会」「お別れ会」と呼ぶことに。それぞれ、31日、4月1日に決まり。今日は一旦お休みの日だ。

このぐらい余裕があって良かったと思う。横浜や九州からも何人か駆けつけてくれる時間の余裕もできた。

コロナもあるし、本人は、もしもの時は家族だけで簡単に送るので良くて、親族や友達は呼ばなくていいと言っていたそうだが、決して多くはない親しき人々に訃報を伝えると、皆来たいと言ってくれたみたい。その愛や友情を無下にする理由が無い。

父は、昨晩、頑張って全ての段取りを決めた。自分がやらねばならぬという責任感だろう。それを妹がしっかりとサポートしていた。

自分といえば、すっかり傍観。こういう時に一気に社会性が無くなるのである。

特に、母が息絶えた昨日は、心がそんなに穏やかではなかった、と言った方がいいか。何にせよ、家族一人一人で役割が違うのを感じた。

一緒にやってきたはる坊は、家から車で出発してすぐに熟睡。線香をあげる間、ばあばと同じ向きで、同じように眠っていた。家に帰りつくと車の中で目覚めたはる坊。わけのわからないうちに全て終わって、きょとんとしていた。

昨日の夜が最後の夜だったということになる。今日も昼前まで、時々様子を見ては、むくんだ足をマッサージし、すっきりさせる事を続けていた。

まだまだ息をし続けそうだったので、一度家に戻り、疲れからくる昼寝をして目覚めた16時過ぎ、息が止まったという連絡が入った。

予想していたようで全然予想していなかった。

急がないようで、そこそこ急ぎながら、とりあえず車で病院に向かった。信号待ちの時にはもう雲に隠れてしまったけど、南へ走っている間ずっと、曇から太陽が現れ、西側から黄赤みがかった光が差していた。

病院に着くと、当然、母は息をしていなかった。

そうか、治らなかったか、と思った。

一般常識からすれば、数日持たないのが現実だったのかもしれないが、自分は、正直、死ぬと思っていなかった。本人も、まだまだ死ぬ感じがしないと言ってたし。

正確にいうと、もともと死の可能性は否定していなかった。ただし、それを恐れず、フォーカスもせず、あらゆる可能性を受け入れた上で、また元気になると確信していた、というのが近い。

だから、正直、え?そうなんだ。。と思った。

宇宙の真理の入り口を学んでいる最中だからといって、達観しているわけじゃあなく、母の死にはガックリきた。それでいい。人間だから、寂しさはあるしガックリはくる。

死ぬことを考えていなかったので、面会できるようになった病室でも、それを前提とした心温まる会話はしてこなかった。でも心の内に秘めるのは母も一緒なので、分かってくれているはず。

話がほとんどできなくなったこの4日間、どんな世界を見ていただろう。

最後に過ごした病院でなんとなく数枚の写真を撮った。

病室の番号は、足せば母の誕生日と同じ13。死ぬのも生まれるのも一緒と感じたのは、間違いではないかもしれない。

とほかみえみため

ここにきて、湿度が31%?

口呼吸で喉が渇くのに拍車をかけるのが、この病室の湿度の低さだった。他は全て快適だけど、とにかく乾燥しており、湿度は20%ぐらい。濡れタオルをかけるなどして、その効果か誤差なのかで21%になるのが限界で、22という数字はほとんど見たことがなかった。ホテルや病院の宿命か。

ダメもとで買ってみた卓上加湿器でもこの数字は変わらず、せめて、加湿器の周囲は多少良いと思うしかなかった。

で、加湿器の水を補給した今、ふと目をやると、31%だ。なんでか。

いつも夜中には上がっていたのだろうか?そんなことないように思うけど。いずれにせよ、普通ならまだまだ低すぎる湿度だけど、今まで見たことのない数字を見てびっくり。

数字。母も、誕生日やらなにやら、偶然の数に秘められた何かを信じていた。

一人ひとりが持つ数字、住所、部屋番号、訪れたカフェの駐車場の空きの数、何から何まで、導かれたものらしい。

はる坊はこの前、皆でイトーヨーカドーに行ったとき、また気になるおもちゃを見つけてしまったらしい。プライムビデオでよく見ていたウルトラマンZに出てくる巨大ロボット。ウルトラマンの仲間だ。

それからというもの、毎日のように、「ロボット買う」「イトヨカトー行く」と、まりごろうにそれはそれはしつこく話しかけてたらしい。。

こちらも、「誕生日でもないのに、そんないつも買えないよ」「お金ないよ」と言い続けていたけど、まりごろうと話し合った結果、与えてみることにした。

お金で何か買うことに、あまり甘やかすつもりは無かったけど。まあ今回も正直甘いけど。はる坊との約束はただひとつ。えみごろうと一緒に楽しく遊ぶんだよ、と。

満面の笑みで約束したはる坊を連れて、イトーヨーカドーへ。ロボットを手に入れたはる坊は、とても大事そうに、手から離さなかった。